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カテゴリー「aim -the rusted gun-」の記事一覧
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三月十七日。
春一番が過ぎ、ようやく暖かくなり始めても海沿いは未だに寒さが残っていた。
さほど遠くない場所に見える港からは凪いだ海を滑るように客船が出港し、残った人々が船に向かって手を振っているのが見える。
影が霞む程の薄曇の空は冬の気配を残しているが、時折吹く風の冷たさは冬のそれよりも暖かい。
歩いている人々の服装にも春らしい彩りがちらほらと見える中、黒地のダウンジャケットに濃いグレーのデニムジーンズと軍靴をはいた男が、入り江のフェンスに寄りかかりぼんやりと景色を眺めている。
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志島の抱く憎悪は、思い込みと勘違いから生まれたものだった。
「刑事の兄ちゃんなら知ってるだろ。こいつが俺の親父とおふくろを殺した犯人だって」
夏の追憶から現実に意識が戻る。志島の言った言葉が噛み砕けず思考が滞っていたが、意識が目の前の現実に戻るにつれようやく理解した。

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事実だけを照らし合わせれば、リオの抜け落ちた夏の記憶を最も客観的に語れるのは鏑木であろう。
志島の言葉を鍵に、鏑木は夏の事件を思い返した。

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十一月十九日。
「―…した。CMの後、引き続きニュースをお知らせいたします」
騒がしい邦楽の伴奏が耳につき、薄れていた眠気が掻き消されていく。
晩秋の空は既に暗くなり始め、適度な遮光効果があるブルーシートのテント内はそれよりも暗い。

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―全ては悪夢の続きから始まる。

 両親が殺された後に続く記憶は、何年か経った雪の日。
朦朧とした意識の中、適当なサバイバルナイフを手に海へ逃げた。
海水の届かない岩場に積もった雪を踏んで、灰色の空と海の境界線を見ていたのを覚えている。
人体の急所を叩き込まれていたのにあえて手首を選んだのは、心底死ぬつもりがなかったからだと今は思う。
ただ、生きている痛みに希望を抱いていたような気がする。

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十月二十日。
些細な事は徐々に思い出してきたが鍵となる記憶は未だ思い出せず、日数だけが過ぎていた。
「龍輝」
夏には蒸し暑かったブルーシートの下は肌寒くなり、薄汚れた毛布にくるまってリオは視覚できない存在の名を呼ぶ。
「俺がナハトと呼ばれていた事は間違いないんだな」
「(…僕の知る限りはその通りだ)」

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光が、見える。
ゆらゆらと形を変えるそれは碧く、水底から見る明かりのように眩い。
俺はぼんやりした意識の中、その中を漂っているとはっきり認識した。

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暗い闇の中、暁は手にした傘の持ち主の帰りを待っていた。
遠くにほんのり見える外の光は薄く、そこに浮立った岩が雨音を奏でる。時折唸る轟音が岩を通して暁に届き、募る不安を掻き立てた。
「(…あの人、大丈夫なのかな)」
何度目かになる言葉を心の内に吐き出し、外の光から目を逸らす。

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名も知らない青年が洞窟に入ったのを確認すると、リオは踵を返して叢の中へ駆け出した。
大粒の雨が全身を打ち、一瞬にしてずぶ濡れになりながらも一直線に走りつづけて辺りを詮索する。
「!」
長く伸びた草の葉が正面から伸び、先端を鋭く尖らせてリオに向かってくる。
突き立つ葉の下をかいくぐり、すれ違い様に葉の根本に銃を構えてトリガーを引く。乾いた音と共に土が穿たれ、鋭く伸びた葉は土と化してぐにゃりと崩れた。

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三年前の四月十七日。

 主を無くした建物は更に腐敗が進み、崩れるのも時間の問題だった。
一匹の猫がそれを守るように住み着き、もういない主の帰りを待っている。
―それが、青年が再び訪れた時の廃墟の姿だった。

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