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5 - He is
暗い闇の中、暁は手にした傘の持ち主の帰りを待っていた。
遠くにほんのり見える外の光は薄く、そこに浮立った岩が雨音を奏でる。時折唸る轟音が岩を通して暁に届き、募る不安を掻き立てた。
「(…あの人、大丈夫なのかな)」
何度目かになる言葉を心の内に吐き出し、外の光から目を逸らす。

凜、と響く音。

 弾かれたように顔を上げ、もう一度外の光に目を凝らす。
ほのかにすぼんだ外の光に燻る陰りがそこにある。
「―」
「…変わらないな、暁」
耳にした声は暁がついさっき聞いたリオの声に違いない。しかし微かに高みを帯びたその声は暁が見た彼のものではないと、曖昧な無意識が確信を持たせる。

「―…龍兄」
暁が目にした男は、紛れもないその男の姿だった。

 現れた男の姿は赤い斑模様だった。
赤く染み付いたそれが血であることは遠目からでもすぐに気付く。
全身ずぶ濡れの格好で暁を迎えに来たその姿が奇妙なまでに懐かしく、思わず目を細める。
「リオがお前に会うのは予想外だったな…」
いつもお前は僕にとって予想外だと付け足して、手に握っていた大型の狩猟ナイフを手放す。
手放されたナイフは地面に落ちる前に煙となって昇華した。
一歩ずつ近付いてくる男はリオの姿でありながら、その挙動も仕草もリオのそれとは全く異なる。
「―リ、オ?」
目の前の男が「龍兄そのもの」なのか、ついさっき言葉を交わしたばかりの「龍兄に似た別人」なのか理解できず、片言の発音で知らない名を繰り返す。
ああ、と察した男は言葉を付け足した。
「どう説明しても難しいだろうな…。暁、非現実的な話で悪いんだが、幽霊が人の体にとり憑くことは知ってるな?」
唐突に次元の違う話を振られてきょとんとする暁。
「あ、うん」
その手の話は興味がなくともそこらじゅうに転がっている。
「今お前が見てるのはそれと同じだ。リオという人間を通して龍輝という人間だったものと話をしてる」
暁は一拍おいて驚きの声をあげた。
リオと異なる仕草は龍兄―暁が知る、青井龍輝という男のそれである。しかしそれを看破したところで、暁は彼が目の前にいることは有り得ない事を知っていた。それ故に目の前に龍輝がいることがにわかに信じられなかった。
「え、だ、だって龍兄は三年前に死…」
偏に、暁はオカルトを信じていない部類の人間である。たとえそれが目の前の現実に対し辻褄の合う話でも、簡単には納得ができなかった。
「まあ…突拍子過ぎて納得がいかないだろうな。だから似た人間と会話してるとでも考えてくれ」
続けて何か小さく呟いたようだが、雨の音に消されて暁の耳には届かなかった。
「暁、会ったついでに一つ頼まれてくれ。悪いが僕はここに長居できないんだ」
「…うん?」
疑問を棚に上げ、再びきょとんとした顔で見上げる。
「この体が―リオが目を覚ましたら、お前の持ってるあの手紙を見せてやってくれ。それから、龍輝という人間についてお前が知ってることも話してやってくれないか」
暁は黙って頷き、龍輝は俄に笑んで暁の頭を撫でる。
「そういう素直なところも昔から変わらないな。―…今度こそ、さようならだ」
頭を撫でる手の力が緩み、安堵した笑みが消える。
そのまま眠りに落ちるかのように重心が揺らぎ、リオの体は前のめりに倒れ込んだ。
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