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11 - Regret
憎悪、恨み
僕はずっとそれを持って生きてきた
目的を晴らしそれらが消えた時
僕の心に何が残るのだろう

―「Parallel World」

 「…無理だ、殺せない」
 「何?」
 龍輝の返答に蒼鵞は眉をひそめる。
 「因習通りここで死ぬのはごめんだ。だが、ここでお前を殺したら、僕はお前の妹の時と同じように後悔する」
 これまで何事にも動じなかった蒼鵞の顔に、一瞬驚きの表情が浮かぶ。
 人を憎み、その手を血に染める事を愉しんでいる節すらある男が、目の前にいる自分という獲物を殺せないと言う。
 何が龍輝の殺意を揺らがせたのか、蒼鵞には分からなかった。
 「諦めろ。お前が死ぬか俺が死ぬか、どちらかしか選択肢はない」
 どちらも血を流すこと無くここを立ち去れるならそれが最善である。
 しかし蒼鵞の背後に潜む義務と影がそれを許さない。
 意図的なものか無意識に滲み出たものか、逆光の影に隠れて浮かぶ苦悩の表情に、龍輝は周囲の威圧という鎖が蒼鵞を繋いでいるのが見えた気がした。
 「…義務で僕を殺せると思うな」
 その鎖を断てる第三の選択はいくらでもあっただろう。しかし、それが何一つ思いつかない自分の知能の低さを龍輝は呪った。
 苦い顔で狩猟ナイフに手をかけると、それでいいと答えるように、鼻先に突きつけられた水晶が引き戻される。
 微かに見えていた蒼鵞の苦悩する顔は瞬き一つで息を潜め、相手を射竦めるような鋭い視線が龍輝を捉え直す。
 どうにか意識を落とすだけに留められれば最善。しかし気を抜けば、出された選択の通りどちらかが死ぬだろう。
 今まで必要さえなかった、峰打ちのやり方を考えながら、負けじと蒼鵞を睨み返して姿勢を整える。
 瞬きを合図にナイフを引き抜くと同時に、弾かれたように地面を蹴って走りだした。
 蒼鵞は常人より速い龍輝の初速に怯む様子もなく、それどころか憮然とした面持ちで、向かってくる龍輝を見下ろしている。
 「呆れるな」
 氷灰の目が退屈そうに瞬きした瞬間、急にナイフが重くなり龍輝は体勢を崩した。
 右腕を軸にして身体がぐるりと振り回され、転びそうになるのをすんでのところで踏ん張り堪える。
 振り返ると、握っていたナイフが微動だにせず空中で静止しているのが見える。
 動きを止められたナイフを手放せと脳からの命令が下るよりも早く、飛んできた透明な糸が螺旋を描いて巻き付き右腕を固定されてしまった。
 「―この」
 抵抗しようとした刹那、腹に強く鈍い痛みが走り悶絶する。
 背後に立っていたはずの蒼鵞が正面に回り込み、腹に一撃をもらったと気付くのに時間はかからなかった。
 うなだれて痛みに耐えていると、蒼鵞の足が一歩近付き、固定された右腕を強く掴まれた。
 手から力が抜け、頑として動かなかったナイフが落ちる。
 硬い地面を叩く音が不快に耳をつき、刃先が視界の隅に映り顔を照らす。
 暗闇に慣れた目には照り返しの光さえ眩しく、思わず目を瞑って顔を上げた。
 「殺意の削がれたお前に、俺を殺せるとも思えないが」
 目を開けると、蒼鵞が億劫そうな目で龍輝の右腕を見下ろしていた。
 見えていたのは正確には義眼だが、残された片目がそんな目をしているというのは声音から容易に想像できる。
 何かを思い出しながらなのか、龍輝の右肩に伸ばす蒼鵞の動きはどこか緩慢である。
 次に何をされるのか予測のついた龍輝は、抵抗しようと腕を伸ばしたが、痛む腹に阻まれ止める事ができなかった。
 糸の上から肩を掴まれ、ゴキリと嫌な音が響く。その瞬間、腹とは違う痛みが悲鳴をあげる。
 切り傷や殴打など、外からの怪我には慣れている龍輝だったが、脱臼という内側からの怪我にはひどく脆い。
 耐え難い痛みに呻く龍輝をしばらく見下ろした後、蒼鵞は糸の拘束を解いた。
 不自然に支えられていた腕が落ち、地面に打ち付けられる衝撃で更に痛みが増す。
 腹と肩の痛みに意識が飛びそうになりながらも、龍輝は倒れまいと左手で身体を支え歯を食いしばった。
 耐える龍輝をよそに、蒼鵞は落ちているナイフに目を向ける。
 使い古されグリップがすり減ったそれは、刃先は新品のように研ぎ澄まされ鋭利に光っている。
 おもむろにそれを拾い、握り心地を確かめるように二、三度手の中で弄んだ後、刃の背中を指でなでて厚さを確かめた。
 「次は足だったか」
 「…!」
 よく見ると随所に傷がある刃を眺めながら、思い出したように次の狙いを予告する。
 眺める刃の向こうに見える龍輝の足に視線を移すと、手の内でグリップをまわし、ナイフを逆手に持ち変える。
 四つん這いの状態でむき出しになっている脹脛に狙いを定め、突き立てるように垂直に刃を振り下ろす。
 「そうはいくか…!」
 蒼鵞がナイフを振り下ろす瞬間に合わせて、龍輝は痛む腹をおして身体を捻った。
 刃は服を掠め、狙われた足に届く事なく地面を穿つ。
 間一髪のところでナイフを避けた龍輝は寝転ぶように仰向けになり、すかさず投擲ナイフを取り出す。
 一方で、振り下ろしたナイフを避けられた蒼鵞は、地面を穿った衝撃が手に腕に流れ、痺れるような振動に動きを妨げられている。
 蒼鵞が痺れに気を取られている隙をつき、龍輝は投擲ナイフを投げた。
 「ぐっ…―」
 小さなナイフは手の甲を掠めて肩に突き刺さる。
 蒼鵞は低く呻いて、狩猟ナイフを取り落とした。
 からんと音を立てて転がったナイフの刃に、流れた血が数滴落ちて血痕を作る。
 その様子を目で追いながら、龍輝はゆっくりと起き上がった。
 しぶとく残る腹の痛みで咳き込み、外れた肩に響く。
 「(今のうちにナイフを―)」
 相手は蒼鵞である。身体を庇っている暇はない。
 狩猟ナイフを取り返そうと手を伸ばした刹那、龍輝の身体がナイフから遠ざかった。
 両脇の下を通って、蒼鵞の糸が胸囲をくくっている。
 それに引きずられていると気付いた時には遅く、糸が龍輝の身体を岩にはりつけるように拘束していた。
 ぶつかった拍子に頭を打ち、脳が振れて意識が飛びそうになるのをどうにか堪える。
 何がどうなっているのか、辺りを見回そうと頭を起こそうとして、首を前後に動かせないのに気付く。
 龍輝の首を締めている糸は、釘で固定された板のように頑として動かない。しかし窒息させない程度の余裕を持つそれは、明らかに蒼鵞が調節している節があった。
 目だけを動かし前を見ると、投擲ナイフが刺さったままの肩を押さえながら、落とした狩猟ナイフを拾う蒼鵞の姿があった。
 その左肩からは血が滲み、青いマフラーとセーターに混ざって赤とも紫ともつかない染みが広がっている。
 眉間に深い皺が彫り込まれた顔からは、痛みに耐えている様子は見て取れるが、怨恨や憎悪といった感情は目を見ても見当たらない。
 ただ無機質に相手を処理する。精巧な機械を思わせるその仕草は、龍輝の知る「蒼鵞」とは程遠い。
 「(このまま殺されて終わるのか)」
 何か言葉を発しようと口を開けるが、締められた喉と頭の痛みでうまく声が出ない。
 仮に喋る事が出来たとしても、蒼鵞が止まる保証などない。
 誰の声も届きそうにない、否、心に呼びかけて止まるような存在ではない眼前のそれに、龍輝はこれまでと違う戦慄を覚えた。
 その間にも、目の前の男はナイフを手にゆっくりとこちらへ歩いてくる。
 龍輝の足先までやってきた蒼鵞は立ち止まると、一呼吸置いてから龍輝の足を踏んで押さえた。
 「動くなよ」
 首は動かないが、手は自由が利く。
 龍輝の手に、忍ばせておいた銃のグリップが触れる。
 眼前の危機に躊躇う暇はない。
 振り下ろされるナイフがやけに遅く見える中、龍輝は握りしめた銃のトリガーを引いた。

 それは銃が暴発したのかと錯覚しそうになる程同じタイミングだった。
 痛覚が足の甲に一つ増えようが、ほぼ全身が痛む身体にとっては大差ない。
 辺りに跳ね返る音はしぶとく耳に残り、聴覚を麻痺させる。
 目をこらして硝煙の先を見ると、赤く滲んだ点と、胸元にできたそれを呆然と見つめる蒼鵞がいた。
 一瞬、何が起きたのか分からないという顔をしていた蒼鵞は、自分の胸に開いた穴に触れようとして、咄嗟に口に手を当てる。
 水中で溺れ苦しくなったように咳き込むと、押さえた手の隙間からいくつもの赤い筋が流れ落ちてきた。
 暴れ狂う痛みに耐え切れなくなった蒼鵞は、龍輝の足に突き立てたナイフを支えに膝を折る。
 その震えは足の甲に伝わり、傷を抉る。
 「そうだ、それでいい」
 銃声で静謐さえ聞こえないはずの龍輝の耳が、穏やかに肯定する蒼鵞の声を確かに聞いた。
 まるで、その時を待っていたかのように。
 ふいに締め付けられていた喉の苦しさが和らぎ、喉元に目をうつすと、緩んだ糸が力なく垂れて龍輝の身体を横断していた。
 同時に滞っていた空気が一気に通り、思わず咳き込む。
 喉についた糸の跡に触れた時、龍輝はふとある事に気がついた。
 「何故、そんなまわりくどい事をした?」
 龍輝の首を締めていた糸は、夏の日、一瞬で立樹の首をはねたものと同じものだ。
 肩を外したり足を狙わなくとも、振動させたそれで首を狙えば、蒼鵞は自分が怪我をする事もなく全て終わったはずである。
 「…それが儀式の手順だからだ」
 吐いた血を拭い、整わない息をおして蒼鵞が答えた。
 「言っただろう。義務を果たさなければならないと」
 「…本当にそれだけなのか」
 「人を、いたぶる趣味はない」
 龍輝は半ば呆れた様子で蒼鵞を見た。
 蒼鵞は俯いたままそれ以上喋ろうとはせず、口元から手を離して血を拭っている。
 負わされた義務はおそらく、竜飼家の後継ぎとして鬼子を処分する事だけではなかっただろう。
 それが語られる事はないにせよ、全ては龍輝を始末するという内容に収束しているのに間違いはない。
 どこまでが本当で、どこまでが嘘かを蒼鵞が答えるつもりがない以上、龍輝は蒼鵞の言った言葉を信用するしかなかった。
 「妹といいお前といい、どこまでも自分勝手な奴だな」
 義務を避けられない。その精一杯の抵抗として、蒼鵞は自分が殺されるという選択を用意し、龍輝にそれを取らせた。
 そうまでして龍輝を生かそうとする理由は、龍輝には理解が及ばない。
 「僕の意思などおかまいなしに、自分が死ぬ方を選ばせて満足か」
 「死にたくないと言ったのはどこのどいつだ馬鹿野郎」
 思いつく限りの言葉で吐いた毒に、ほとんど即答のタイミングでカウンターを返され思わず口をつぐむ。
 蒼鵞の本心を知らないままでいたなら、まだ動く方の足で蹴り飛ばしていただろう。
 そんな龍輝の葛藤も知ってか知らずか、蒼鵞は支えにしていたナイフを引きぬいた。
 栓の抜けた傷口から血が溢れ、じわじわと靴を染めていく。慣れ始めてきていたとはいえ、苦痛の根源が新しく増えるのは嬉しくない。
 血を吸った布地が足に貼り付いてくる不快感に眉を潜めながら、龍輝は後ずさる蒼鵞の動きをじっと見ていた。
 左胸に開いた穴は熱で焦げ、侵食するように血が滲み命が抜けていく。
 広がる血の量は龍輝の足ほどではないが、貫通しなかった弾丸を内包する身体のダメージは足の比ではない。
 蒼鵞は辺りを見回すと、ほのかに照らされている蝋燭台の岩に近づいて腰を下ろした。
 それに合わせて、糸が億劫そうにのろのろと動き出す。
 糸はずるずると地面を這っていくと、先端の水晶と共に主の手元に帰っていった。
 「何かを得る為に、何かを犠牲にしなければならない。そんな単純な理は、野生児みたいなお前の頭でも、理解できるだろ」
 移動で消耗した体力が思ったより大きかったのか、龍輝と対面する形で座る蒼鵞の息は浅い。
 しかし、『解かれ』と訴える目は死に絶望する濁りも、機械のような無機質さもなかった。
 「俺はここで死に、お前を脅かすものは、この世界からなくなる。お前はもう、怯えなくていい」
 その声はとても穏やかなものだった。
 例えるなら、夜闇を恐れる子供に明かりを与え、もう怖くないよと宥める親のように。
 龍輝が何に怯えていたのか、言葉の意味を理解するよりも先に、既に避けられない眼前の男の様相が首を横に振らせる。
 「余計な事を…」
 十一年前の後悔を嫌でも思い出す。
 異なるのは、自分の身体を動かせない事だけ。
 そのたった一つの違いが、今の龍輝をどうしようもなく苛立たせた。
 「一人で勝手に決めやがって。それで生き残って何になる!?」
 声が傷に響こうが関係ない。
 ありったけの怒りと不満を込めて吠えた龍輝を、蒼鵞は自嘲的な目で見るだけだった。
 「減らず口が叩けるなら、十分だ」
 次いで言葉を続けようと口を開いたところで、蒼鵞はせり上がる血に止められ咳き込んだ。
 ただの点だった胸の穴は、気が付くとおびただしい量の血で染まり、青いセーターを赤黒く染めている。
 血を吸ったセーターは重く、冷えて蒼鵞の身体の熱を奪う。
 酷い寒気が全身を覆うなか、撃たれた肺に留まる弾と、左肩に刺さるナイフだけが焼けるように熱かった。
 「(…わがままを許せと言うのは無理な話だな)」
 喚く龍輝を無視し、蒼鵞は静かに目を閉じた。
 瞼の裏に残った映像から、頭の中で得物の軌道を描く。
 あとは、それが可能な力が残されているかどうかの賭けである。
 閉じた目を開き、正面で両脚を投げ出して座っている龍輝に目線を合わせようとする。
 思っていたより血が失われているのか、霞んだ視界で見えるのは光と影の位置、大雑把な人体の形だけで、視覚を以て狙うのは難しい。
 何かがおかしいと勘付いたのか、喚いていた龍輝の動きが止まった。おそらく訝しんだ顔をして自分を見ているだろう様子が想像できる。
 右腕を上げ、冷たくなり始めた指先を向け、わずかに光を反射する水晶に軌道を念じる。
 蒼鵞の手を離れたそれは音もなく飛ぶと、龍輝の左脇の下をくぐって弧を描き、腕を一周して背後に通り抜けていった。
 少し軌道がずれていたのか、水晶が背後の岩を掠めた音が聞こえる。
 その音で龍輝に気付かれてしまっても、蒼鵞に焦りはない。
 「しまっ―」
 龍輝が手元の銃を握るより早く、左肩に巻き付いた糸は腕を切断した。
 鮮やかな切り口を中心に、はねた血が四方八方に飛散し貼り付く。
 負った怪我のどれも及ばぬ程の痛みは、激痛という言葉ではとても表しきれない。
 飛んできた血の一滴が目に入り、完全に視覚を閉ざされた蒼鵞は、耳をつんざくような龍輝の叫び声を静かに聞いていた。
 「その傷で、生き延びられたなら、忘れるな」
 切断された腕の痛みで、龍輝に話を聞く余裕などないと知りながら、蒼鵞は小さく呟いた。
 自分のした行為が道連れと言うのならそれで正しい。
 最初からそれを選んでいたのだから。
 その二言を実際に口にする事ができていたかは分からない。
 物を動かす力は、人が想像するより脳の疲労や体力の消耗が激しい。
 極寒の地に置かれたような寒気に、失血でその機能が止まりつつある身体の音を聴く。
 既に朦朧としていた蒼鵞の意識は、五感が察知した情報を受け取ることができなくなっていた。
 「(―ちゃん)」
 夢か現かもはっきりしない暗闇の中、雪とも光ともとれる、ふわりとした何かが視界に映る。
 顔を上げると、淡い光の中から、小さく華奢な手が差し伸べられていた。
 蒼鵞は見覚えのあるその手と少女が誰だったかを思い出せない。
 ただ、少女の笑みにひどく懐かしさを感じる。
 差し伸べられた手に、既に動かないはずの手を伸ばそうとしたところで、蒼鵞の意識は途切れた。

 「…蒼鵞?」
 聴覚さえ麻痺させるような激痛の中、その音だけは龍輝の耳と意識にはっきりと届いた。
 力尽きた腕が地面に落ちる音で我に返った龍輝は、右肩を外され、左腕も切断されて、横倒しになっている上半身を自力で起こすことができない状態だった。
 地面に頬ずりする形で首をひねると、切り離された自分の腕と血のついた水晶の先端、そしてぴくりとも動かない蒼鵞の右手が見えた。ついさっきまで動いていたそれが、見慣れた『二度と動かないもの』になってしまったと龍輝の脳は判断する。
 しかしその判断を龍輝の感情は受け入れられなかった。
 嘘だ。
 嘘だ嘘だ嘘だ。
 後悔とも悲しみとも、怒りともつかない衝動が瞬時に膨れ上がり爆発する。
 「っ―」
 言葉とは到底呼べない叫びが洞窟を震わせる。
 それは猛獣の怒り狂う雄叫びと相違ない音だった。
 かすかに響く、鈴の音を連れて。

 *

 深夜にかかってきた電話は主治医の平山からのものだった。
 「もしもし」
 「深夜にすみません。先ほど手術は無事終わりました」
 「そう。いつもありがとう」
 「それが私の仕事ですから。今はICUを抜けましたが、面会は容態が安定するまで控えるようお願いします」
 「分かったわ。個室に移せるようになったらまた教えて」
 「傷の状態から見て、全治は三ヶ月かもっとかかるか…。ああ失礼、全治の予定はありませんでしたね」
 「いいのよ、あなたは医者だもの」
 受話器の向こうで謙遜した笑い声が聞こえる。
 「では、また」
 静かに受話器を離し、美龍は電話を切った。
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